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エンジニアリングアウトルック



◆総論

◇本格回復は2002年度以降に
 我が国のプラント/エンジニアリング業界は、国内市場の長期不況に伴う設備投資の低迷、海外市場での案件数の減少や競争の激化など市場環境が大きく変わり、厳しい環境のもとに置かれている。案件数の減少はアジア金融・経済危機などを引き金に、東南アジアなどでプロジェクトの凍結や延期が相次いだことによる。それに石油や化学業界などでの世界的な企業の統合再編に伴うプロジェクトの見直しなどが拍車をかけている。その数少ない案件に世界中の有力企業が殺到した結果、受注競争が激化し、しかも驚異的なコスト競争力を売り物にする韓国、中国など中進国企業の追い上げによって価格競争も激化するといった構図だ。
 因みに本誌の独自調査によると、1999年度の海外プラント成約額は1兆2,107億円にとどまり、前年度比24.3%の大幅な減少となった(別項:関連資料T)との結果が出ている。この成約額は1990年代で最低の水準であり、これまでに海外受注が最も多かった96年度(2兆4,967億円)の半分にも満たない数字となった。通産省機械情報産業局国際プラント推進室がまとめた「1999年度の海外プラント成約実績」でも同様の傾向を示し、我が国企業の99年度の海外向けプラント成約実績は573件、80.4億ドルで前年度に比べ件数で28.8%、金額では15.2%の減少となっており、97年度以降3年連続の減少を記録した(同:関連資料U)。
 我が国企業の主力市場である東南アジアの場合、99年度に成約したプロジェクトの大半はメジャー関連で、負債などに苦しむ地元資本のプロジェクトが具体的に動き出すまでには、あと1〜2年かかると言われる。そのため我が国企業の業績が本格的に上向くのも2002年度以降になると見られる。ただ、海外市場で「前期は合計7,000億円だったAランクのプロジェクトが2001年3月期は1兆円を見込める」(エンジニアリング専業大手)、国内も「受注引き合いが活発化し、V字型の回復を予想」(ユーザー系エンジニアリング会社)などといった見方も出ており、その意味では2001年3月期がターニングポイントになりそうだ。


◆専業大手3社

◇4期ぶりに揃って黒字達成
 千代田化工建設、東洋エンジニアリング(TEC)、日揮のエンジニアリング専業大手3社の2000年3月期決算は、96年3月期以来、4期ぶりに3社揃って黒字を確保した。日揮が2期連続の黒字を達成、TEC、千代田両社も経常利益ベースで黒字化を実現したことによる。だが、2001年3月期は日揮、TECは引き続き黒字を見込んでいるものの、千代田は経常損失170億円、当期純損失200億円の計上を予想するなど厳しい状況。そのため専業大手3社の中でも“格差”が一段と拡大する傾向が強まっており、21世紀での生き残りをかけた企業競争が加速しそうだ。
 専業大手3社の2000年3月期の受注高は日揮2,114億7,300万円、TEC1,070億1,000万円、千代田792億9,700万円で3社とも前期実績を下回り、なかでも千代田は2期連続で1,000億円の大台を割り込んだ。これは世界的な案件数の減少や韓国、中国など中進国エンジニアリング企業の台頭による競争激化などが要因。我が国企業の主力市場である東南アジアなどで大型案件の凍結・延期やキャンセルが相次いだことも大きく影響している。その結果、専業大手3社の2000年3月末の受注残高は日揮5,372億円、TEC2,183億円、千代田1,339億円といずれも前期に比べ減少。2年分以上の受注量を確保した日揮を除き、TEC、千代田の両社は“仕事量”確保が課題のひとつと言える。
 2001年3月期売上高(単独)は千代田850億円、TEC1,200億円、日揮2,400億円の見込みであり、3社とも引き続き技術競争力やコスト競争力の強化に注力。そのなかで米KBRや三菱商事、東京三菱銀行の支援を受けて再建中の千代田は、財務体質強化や受注力強化を図ると同時に資本面、業務面を含めた抜本的な方策に着手する。TECも高収益体質の“トランスナショナル企業”を目標に、新中期経営計画のもとで事業構造の改善などを推進。日揮はトップランナーであり続けるための諸施策を実施中であり、その意味では各社ともこの1〜2年が正念場と言えよう。


◆高炉5社エンジ部門

◇製鉄エンジから環境へのシフトが進む
 高炉5社エンジニアリング部門の2000年3月期決算は、全般に低調に推移した。国内のごみ処理施設で受注が増加した神戸製鋼を除く全社が受注・売上とも減少させている。固定費削減などコスト低減に各社とも取り組んでいるが、新日鉄、NKKの2社は増益したものの、他は減収に追いつかず採算も悪化している。
 製鉄プラントは、海外案件の受注が難しくなり、製鉄エンジニアリングのあり方が問われるようになってきた。川崎製鉄では、以前からEPC案件よりもより採算性の高い技術協力などソフト案件中心の展開を続けている。住友金属も独自技術の中厚スラブ連続鋳造機商談を追いつつも、より技術協力案件にシフトする姿勢を打ち出し、従来の製鉄エンジニアリング部を海外技術協力室へと改称。同社のエンジニアリング部門から「製鉄」の文字が消えたことになる。その一方、新日本製鉄では新たに「高炉プラント部」を設置、海外のみならず国内他社の高炉案件をも取り込んでいく姿勢だ。製鉄のEPC案件は新日鉄を中心として神戸製鋼の直接還元鉄プラント、NKKの3社が継続し他の2社はソフトへと2極化が進んでいる。
 他の分野では、橋梁関連が比較的好調に推移した。これは公共工事の発注の増加によるものだが、年度下期からは公共工事の息切れが目立つようになり、現在ではやや伸び悩んできている。プロジェクト自体が減少傾向にあることからも、これも今後安定的に受注量が確保できる分野ではなくなってきた。エネルギー関連でもパイプライン工事が減少している。世界的には天然ガス関連で今後需要拡大が見込めるが、各社は国内の比重が極めて高いため、海外マーケットの活況の恩恵を受けていない。
 各社が現在、共通して取り組んでいるのが環境分野。ガス化溶融炉の開発も一段落しており、今年度は一斉に受注獲得へと動き出す。製鉄から環境へと高炉エンジニアリング部門は重点分野をシフトさせている。


◆造船・重機6社

◇事業構造の見直しが具体化
 造船・重機6社の2001年3月期は、住友重機械工業が単独で過去最高の売上を記録し利益も向上したのをはじめ、日立造船も売上は減少したが利益は改善した。しかし、三菱重工業が三重工合併以来の赤字を計上するなど、業績回復への兆しは見られるものの、決算数字としてはまだ明確に現れてはいない。
 もっとも、三井造船は過去の負の遺産を一掃するために特別損失を計上し、赤字工事も終了する。三菱重工業も海外案件で発生する損失を前倒しで計上している。そのため、2001年3月期では業績が改善する見込みが立っており、その意味ではむしろ前向きの決算内容といえる。
 環境装置分野は、ごみ焼却炉の新規案件が減少したが、ダイオキシン対策の期限が2001年に迫ってきていることから、排ガス高度処理関連工事が多く発注されたことで支えられた。新規建設より採算性も高いため、利益面でもこれが寄与している。今年度は、新規案件の発注量が大幅に増えるものの、この分野への新規参入者も増えており、競争も激しくなりそうだ。そのなかで、日立造船と三井造船が環境装置分野で提携し、各々のメニューを拡大して営業を展開していくこととなった。環境装置の大手メーカーが国内他社と提携するのはこれが初めてのケースだ。一方、鉄構分野では受注の減少が続き、採算が取れなくなってきているため、石川島播磨重工業と川崎重工業は鉄構工場の集約・再編に着手した。また、製鉄機械では三菱重工業が日立製作所と合弁を設立することで合意、両社の技術を持ち寄って、激化する一方の製鉄プラント市場での競争力強化を図っている。
 造船・重機の事業分野で、マーケットの縮小と競争の激化により、各社個別の展開では事業を維持することが難しくなっている分野が現れてきた。IHIでも、一部の大型産業設備で他社との連携を探るなど、アライアンスや生産集約といった業界全体での事業構造改革が進もうとしている。


◆重電4社

◇国内電力案件は減少、海外での展開がカギ
 東芝、日立製作所、富士電機、三菱電機の重電4社の2000年3月期決算状況は、国内の電力会社の投資抑制が大きく影響している。各社の重電関連部門を見ていくと、三菱電機は重電機器部門で受注・売上とも減少。富士電機は受注が減少したものの、売上では海外の大口案件の計上で増加。日立製作所は受注を公表していないため不明だが、売上は減少している。唯一、東芝が海外の大口案件によって受注・売上とも増加した。今回の業績の差は海外での実績の差が現れているといえる。
 特に東芝は積極的に海外での案件獲得を図っている。米GEとの協力関係を強化しており、蒸気タービンブレードの生産合弁が国内およびメキシコで相次ぎ立ち上がったことで、さらに海外の案件を狙える体制を整えた。GEとの関係強化が、海外展開の拡大に繋がっているようだ。しかし、海外も発電設備はアジア地域でも整いつつあり、しかもIPPがメインとなっているため、特に火力発電は需要が頭打ちになってきた。一方、電力流通設備に関しては発電設備に比べて整備の途上にあり、電化地域が拡大しつつあることからも、変電・送電分野では拡大していくことが期待されている。こうした案件で国内の減少を補うことになりそうだ。
 一方国内では、引き続き投資抑制が続きそうだが、原子力増設案件が立上がり始めようとしており、やや明るさを取り戻しつつある。しかし2001年3月期で原子力関連が増加するかどうかは、不透明だ。
 電力以外では、産業分野は民間設備投資の抑制で低水準で推移したが、水処理システムなど公共投資関連は比較的堅調に推移。しかし、これも今後は公共投資の息切れにより、現在の水準で推移するかどうかは不透明。富士電機では、交通関連で自動料金収受システム分野に期待を掛けている。また今後は、電力設備でも産業分野でもITを駆使した製品やシステムが求められており、三菱電機はこれによって競争力を高めていく方針だ。


◆重電系工事会社

◇エンジニアリングをベースに業容拡大狙う
 東芝プラント建設、日立プラント建設の重電系工事会社2社は、いずれも受注・売上ともに減少した。電力プラント工事では、国内の水力および火力発電分野が減少を続けている一方、原子力関連工事は両社とも増加している。しかし、電力プラント部門の合計では原子力の回復が本格化していないことから、火力・水力の減少を支えきれず、受注・売上ともに減少となった。電力以外では日立プラントが産業システム分野で民間設備投資抑制の影響で大幅に減少した一方、東芝プラントは売上は減少したものの民需で受注を延ばした。また、海外に関しては日立プラントが売上は大幅な減少となったが、製鉄設備の据付工事などで僅かに受注を延ばした。東芝プラントは大口発電設備工事の繰り延べで大幅に受注を減少させている。
 原子力に関しては明るさも出始めているが、国内電力会社の設備投資の抑制と、国内でも競争が激しくなり採算面でも厳しさを増していることから、両社ともそれぞれに独自分野の育成を図っている。日立プラントはHACCP対応の食品工場の総合エンジニアリングで実績をあげてきているほか、医療分野では4月にスタートした介護保険制度に対応したコンピュータソフトを開発し、着実に実績を重ねている。また今後は海外市場の開拓も積極的に推進する考えだ。
 一方、東芝プラントでは昨年、国内の電力会社向けでは初のEPC案件となるプロジェクトを完成、「EPCコントラクター」としての業界トップを目指すなかでの重要な礎を築いた。また、独自分野としてESCO事業やPFI案件への取り組みを打ち出しており、事業の拡大を図っている。従来から注力している環境分野では有機性廃棄物堆肥化装置「ガルスプラント」や、建設現場における濁水の処理装置などの新製品で受注拡大を図る。
 両社とも、従来の事業の枠にとらわれずエンジニアリング力を生かした提案型ビジネスを展開して事業拡大を目指している。


◆計装・制御メーカー

◇本格的な事業構造改革に着手
 山武、横河電機の計装・制御大手メーカー2社の2000年3月期決算(連結ベース)は、山武が売上高1,696億3,300万円(前期比5.2%減)、経常利益73億700万円(同1.4%減)で減収減益、横河電機は売上高3,133億5,300万円(前期比11.8%増)、経常利益105億7,500万円(前期13億1,600万円の損失)の増収増益となった。両社とも主力事業である民間企業向けを主体とした設備投資向けシステム・機器事業は、国内の回復の足取りが弱く、保守費用の削減が続くなど依然、厳しい状況に置かれている。特に山武の場合、産業システム事業と並ぶビルシステム事業も建築業界の長引く不況によって低迷、それが“ダブルパンチ”の形で業績に響いた。  その中で山武は産業システム事業とビルシステム事業のグループ統合再編後、初の連結会計年度となる2000年3月期を新生・山武グループの基盤作りのスタートラインに位置付け、積極的な事業運営を展開。営業・サービス支援情報ネットワークの拡充や国内外での営業拠点新設などに継続的に取り組み、海外企業の事業部買収や資本参加なども進めた。「飛躍への挑戦の年」である2001年3月期では産業システム、ビルシステム、制御機器の基幹3事業の強化に注力、同時に従来の事業の枠だけにとらわれない新技術・新製品開発、新事業の開拓、海外事業の拡大にも挑戦する。
 一方、横河電機は2000年1月に発表したグループの新長期経営構想「VISION-21&ACTION-21」のもとで、5年後のゴールを目指して各種施策を展開、2005年度の連結経営目標である営業利益500億円、売上高5,000億円、ROA5.0%、ROE10.0%の実現に取り組む。既に高度な技術を持つ各社との提携をはじめ、IT事業、半導体製造装置のサービスなどの新事業に着手、グループ経営自体も従来の“自主独立”路線から“自律と連携”に転換し、グループ利益の最大化を実現するための体制・インフラ・仕組みの整備・強化を図っていく。


◆機械系プラント・エンジニアリング

◇事業の再編・再構築が加速へ
 機械系プラント/エンジニアリング企業13社の2000年3月期(連結ベース)を見ると、前期に比べ売上高の増えた企業が5社、減った企業は8社で99年3月期の増加企業3社、減少企業10社に比べ僅かながら改善傾向が見られた。だが、経常利益では増えた企業が2社しかなく、逆に減った企業は11社にのぼり、前期の増加企業4社、減少企業9社に比べ一段と厳しい状況となっている。この結果、当期損失を計上した企業が前期の3社から2000年3月期は5社に増え、機械系プラント/エンジ企業を取り巻く厳しい環境を如実に表わしている。
 2000年3月期で売上高が増えた企業の要因を分析すると、焼却施設などの環境関連事業やIT・半導体関連の好調を背景にした精密・電子事業などの伸びによるもの。プラント/エンジ部門は一部の環境関連を除き、海外での大型案件の減少や国内の民間設備投資の抑制などから依然、低迷を続けている。そのため各社では、事業構造の改革を狙いとした経営資源の重点配分や新規市場・新規事業の開拓、新製品・新技術の開発などに注力。同時に競争力の向上を狙いに生産性の向上、コストダウンなどに積極的に取り組んでいる。また、財務体質の強化や収益力の向上を図るため固定費を含む総原価の低減、間接費の削減などに一段と力を入れ、経営の合理化・スリム化を目指す動きも目立つ。
 機械系プラント/エンジ企業の場合、他のプラント/エンジ関連業界同様、2001年3月期も海外市場の急激な回復や国内市場での民間設備投資の大幅な増加などが期待できにくい状況にある半面、新規参入の増加などによって受注競争がさらに激化するとの見方が多い。その中でいかに受注を確保し、グループ企業を含めた収益力を向上させるかが依然、大きな課題であり、その意味では関連会社を含めた事業の再編・再構築が加速されると見られる。また、これまでに取り組んできた各種施策の成果などを、どれだけ実際の経営に活用できるかも生き残りの大きな鍵になりそうだ。


◆タンク

◇“タンク不況”で多角化に拍車
 タンク3社(石井鐵工所、甲陽建設工業、トーヨーカネツ)の2000年3月期決算は甲陽建設、トーヨーカネツ両社が連結、単独ベースとも減収減益、石井鐵工所だけが増収増益となった。石井鐵工所の場合、国内の大型都市ガス製造装置が完成したことによるもので、タンク類は主要顧客先である重化学工業の設備投資激減の影響を受け、新設案件が極めて少ないのが現状。しかも大型案件の数が限られているところから、中・小型案件や補修・改善工事などでも受注競争が激化しており、この厳しい状況は2001年3月期も続くと見られている。
 この“タンク不況”は、石油業界の合併や業務提携に伴う製油所、油槽所の統廃合、電力業界での設備投資抑制や合理化計画の進展などが要因。LNG国家備蓄基地建設計画の具体化に期待がかかるものの、主要顧客先の本格的な設備投資回復には、まだしばらく時間がかかるとの見方が強い。そのため各社とも2002年度から法律(家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律)が施行され、需要の拡大が見込める有機廃棄物処理向けに売り込むなどタンクの新用途開発にも積極的に着手。その中で石井鐵工所は生産体制の合理化、効率化に一段と力を入れ、原価低減による価格競争力の強化を図ると同時に、不動産などでの収益面の安定化に取り組んでいる。
 また、甲陽建設は主力事業であるタンク・配管関連事業に次ぐ経営の柱のひとつに環境・建設機械設備関連事業を位置付け、自社技術の特徴を生かせる分野として廃棄物中間処理施設関連などの育成に注力。トーヨーカネツも中期事業運営方針と収益体質改善計画を策定、それらのもとで物流システム事業で物流機器メーカーから総合物流システム企業への変革、機械・プラント事業ではタンク市場規模に適合した事業体制の確立を打ち出した。いずれにしろ、タンク市場の場合、国内の設備投資拡大が当分、あまり期待できないところから、いかに多角化を図り収益源を確保するかが各社の今後の課題のひとつと言えそうだ。


◆総合建設5社

◇コンサル機能が重視されるエンジニアリング部門
 総合建設大手5社(大林組、鹿島、清水建設、大成建設、竹中工務店)の業績は、国内民間投資の減少に加え、建設市場を支えてきた公共投資分野も息切れにあることから全般に厳しい状況がつづいた。この傾向は、今後も続くものと見られ、引き続き見通しの開けない状況となっている。
 そのなかで各社のエンジニアリング部門は環境や医療福祉、ITなどをキーワードに業容の拡大を図っている。大林組では、情報ビジネスチームや河川湖沼浄化チーム、さらに医薬品工場チームなどを相次ぎ設置。これらの分野での受注拡大に力を入れている。医薬品工場でトップクラスの実績を誇る大成建設も、トップの地位を確保すべく受注活動を展開しているが、それに加えて環境事業部を設置し、社内で保有している環境関連技術を集約して同分野へ積極的に取り組む姿勢を見せている。鹿島でも土壌汚染で専門分野を設置して受注拡大に取り組み、実績を伸ばしてきた。竹中工務店では、エンジニアリングと事業企画を統合させ、付加価値の向上を図るためマーケティング本部を設置、顧客のニーズの拡大に対してエンジニアリング対応力を強化している。これら一連の組織に関する動きは、ゼネコンのエンジニアリング部隊が対応すべきテーマがそれだけ多く現れてきたことを意味する。環境面では、環境保全のみならず省エネや建設廃材リサイクル、土壌浄化などが、また医療福祉関連では介護保険制度のスタートに伴うソフトを含むビジネスの拡大などがある。さらに、ITに関してはほとんど全ての分野のプロジェクトに関わるテーマだ。加えて、本格的にスタートしたPFIへの対応もゼネコンの重要なターゲットであり、清水建設ではIPPも含めて事業投資型案件に積極的に取り組む方針だ。これらの新たなテーマは、いずれも従来のEPCだけなく、コンサルタント機能が重視される。ゼネコンのエンジニアリングは、コンサルタントや事業投資を含む、より幅広いものに変化しようとしている。


◆ユーザー系エンジニアリング会社

◇企業体質強化で生き残りへ
 ユーザー系エンジニアリング会社15社の99年度決算(一部12月期決算を含む)を見ると、売上高で全体の73.3%にあたる11社が前年度に比べ減少となった。しかも売上高が増加した4社のうち、1社は合併によって存続会社の売上規模が拡大したことによるもので、その意味でユーザー系エンジ会社は厳しい環境のもとに置かれていると言えよう。これらの企業は、大半が親会社の設備の新・増設や保全業務などを担当する狙いから設立されたケースが多い。それだけに売上高に占める親会社やグループ会社の比率が高く、親会社などの設備投資動向によって業績が左右される傾向が強いのが特徴だ。その意味でユーザー系エンジ企業の業況は、親会社などの設備投資動向を色濃く反映した結果とも言える。
 我が国の化学、石油業界などでは、世界的な競争激化などに対応する狙いから親企業同士の合併や協業化などの再編が進められ、しかも国内市場の低迷から設備投資の抑制、延期が行われている。これらの動きはユーザー系エンジ企業にも大きな影響を与え、ユーザー系エンジ企業の再編や多角化に拍車をかける要因のひとつとなっている。ユーザー系エンジ業界では、厳しい業況に対応するため人員削減や経費節減などのスリム化に注力、同時に新規分野の開拓や既存分野の深耕、新製品・新技術の開発などに取り組んでいる。
 その中で親会社のリストラクチャリングを契機に、外部受注の拡大に力を入れる“親離れ”の動きや親会社などへの貢献を狙いにサービス向上やコストダウンに注力、グループのエンジニアリングセンターとしての役割を担っていく動きも相次いでいる。ユーザー系エンジ企業の場合、世界的な案件数の減少などを背景に国内の中・小案件でエンジニアリング専業大手などと競合、受注競争が一段と激化するなどの課題も表面化してきた。その意味で2000年度は、各社とも21世紀への生き残りを賭けた“正念場”であり、新規分野開拓などによっていかに企業体質の強化を図るかが大きなポイントになると見られる。


◆総合商社9社

◇EPCから事業投資へ軸足を移し事業拡大図る
 総合商社8社の2000年3月期プラント輸出は総額1兆4,377億円で、大幅に減少した前期をさらに35.6%も下回る状況となり、状況の厳しさを伺わせる結果となった。
 成約案件を見ていくと、前期のように500億円を超えるような超大型案件はトルコ・エルビスタンB石炭火力(586億円)一つしかない。次いで大きかった案件がシンガポール・チュアス複合火力発電(400億円)、オーストラリア・タロング・ノース石炭火力発電(346億円)と発電プラントが上位を占める結果となった。化学プラントでは唯一、インドネシア・ボンタンLNG近代化が大型案件といえるものであった。一方、通信プラントは活況を呈しているものの、1件当たりの金額が大きくならないため、全体を押し上げる結果とはならなかった。化学プラントの案件減少と、案件の小口化が成約額の大幅な減少を招いたといえる。
 昨年来、アジア地域の経済が急速に回復に向かいつつあるが、プラント・プロジェクトは当期内では経済回復の度合いほどには回復しなかった。しかし、商社のなかには下期になってから成約額が上向きつつあることから、2001年3月期に関しては各社とも成約額が回復するものと見ており、強気の予想を立てているところも多い。
 一方、総合商社の動きとしては、従来型のEPC案件から、事業投資型の案件へと軸足が移る傾向がより強くなってきた。既に丸紅では電力販売で1,000億円規模の売上実績を上げており、機械部門のなかで投資案件からの収入シェアが大きくなってきている。EPC案件を子会社に移管する動きも丸紅をはじめ伊藤忠商事なども進めている。また、ニチメン、住友商事、三菱商事なども発電や通信関連で事業投資に力を入れつつある。プラントの売切ではなく、その後のO&Mへと、プラントビジネスにおいて収益を上げられる部分が移りつつあり、各商社はそれに対応しつつ利益の拡大を図っている。