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マイクロGT市場は立ち上がるのか
年内に規制緩和の見通しも、市場性には疑問



 分散型電源の一つとして、マイクロガスタービンが脚光を浴びている。電力会社、都市ガス事業者などが相次ぎ米国製マイクロガスタービンを導入、その実力を高く評価している。また、これまで実用化のための最大のネックとなっていたボイラー・タービン主任技術者の問題でも、年内には規制緩和が実施される見通しとなっている。しかし、それでもマイクロガスタービンへの疑問の声は依然として大きい。

●規制緩和はクリア
 マイクロガスタービンの実用化に最大のネックとなっているのが、「ボイラー・タービン(BT)主任技術者」。ディーゼルエンジンのような内燃機関を用いた自家発電設備の場合、出力が10kW未満のものであれば電気主任技術者を外部委託すれば運転が可能となる。しかし、ガスタービンの場合は出力規模が如何に小さくともBT主任技術者を選任しなければならない。つまり、マイクロガスタービンを設置し、運転するには電気主任技術者を外部委託するとともに、BT技術者を必ず1人常駐させなければならないのである。出力が小さいシステムで技術者を常駐させれば、ランニングコストが膨らみ、システム導入の経済メリットは完全に失われてしまう。マイクロガスタービンを使ったコージェネシステムを実用化するためには、一定規模以下のシステムに対してはBT主任技術者を外部委託してもよい、という規制緩和が大前提なのである。
 もっともこの点については、今年3月に総務庁の行政監査でも指摘されているなど、通産省も前向きに対応しているところだ。関係者によれば、「早ければ9月、遅くとも年内には規制緩和の通達を出すのではないか」という。行政側の対応は意外にも早い。
 規制緩和後は、BT主任技術者を外部委託することによって常駐させる必要はなくなることになり、これでランニングコストの面での課題は解消されることになる。
 だが、一体何処に委託すればよいのか、という問題は残る。
 既に外部委託が可能となっている電気主任技術者の場合、日本電気主任技術者協会や関東電気保安協会のような団体に委託すればよい。しかし、BT主任技術者の場合にはそういった団体は存在しない。電気主任技術者が全国でおよそ10万人いるのに対し、BT主任技術者はわずか1,000人程度しかいないのである。もっとも、有資格者でなくても同等の技術を保有しているもので、通産大臣の認めた者(専技資格者)も有資格者と同じく運転監理を行うことができる(選任許可を受けて選任)。この専技資格者の対象者も、資格者の潜在的な数として考えても、その総数は1万人程度である。
 電気主任技術者の外部委託の場合、技術者は対象施設まで、2時間で到着できなければならない、という規定がある。BT技術者の場合も、電気主任技術者との整合性をとるために、同じく2時間という時間規定が盛り込まれることはほぼ確実。その際、技術者の数が少ないということは大きな壁となる可能性がある。
 マイクロガスタービンの商業化を狙っているメーカーでは、全国の各営業所にBT主任技術者を配置して対応しようとしている。商業化当初は、都市ガス網が整備されている大都市圏に限られた展開となるため、そこに重点配備すればよい、と考えているようだ。

●マイクロGE、FCとの競合に
 BT主任技術者の数の問題は残されているものの、規制面では市場の立ち上げに向けて壁は低くなってきた。だが、課題は技術面にも残されている。
 米国製のマイクロガスタービンは米国内でのガス供給圧力に合わせて中圧で製造されている。しかし、日本のガス供給圧力が低圧であるため、米国製のものを使うにはガスコンプレッサーが必要となる。このコストがバカにならない。ものによっては、マイクロガスタービンと同等のものもあるという。しかも、ハネウエルの場合、ガスコンプレッサーはインド製であり、その信頼性に疑問を寄せる声もある。
 また、キャプストンにしてもハネウエルにしても、トラブルシューティングは日本にはやらせない。何か問題があれば、米国に持ち帰って修理を行う。つまり、日本の代理店や提携メーカーはその技術に関する限り全くのブラックボックスとされている。
 もともと、ガスタービンは小型化すると効率が下がる宿命を負っている。タービンブレードの冷却が難しくなるため、ガスタービン入り口温度を上げられないからだ。これに対してガスエンジンは構造上、小型化してもさほど効率は低下しない。しかも、コージェネシステムとしては、熱と電力の出力比を比べると、ガスタービンよりもガスエンジンの方が電気出力が大きい。これはマイクロ化しても同じであり、マイクロコージェネを導入するようなユーザーは、電気の使用の方が圧倒的に多い。スタート時点から、マイクロガスタービンコージェネは、マイクロガスエンジンコージェネに差をつけられている。
 実際、ヤンマーディーゼルは出力9.8kWというマイクロGEコージェネを昨年から販売しており、今年度だけで200台以上の販売を狙っている。しかも、GEコージェネはBT主任技術者が全く不要で、電気主任技術者を外部委託すればよい。熱効率、熱電比、主任技術者などの面から考えると、ユーザーにとってマイクロガスタービンであることのメリットはあまりない、と言えるだろう。
 これらの課題を抱えつつ、それでもある程度市場が立ち上がったとしても、次には燃料電池コージェネの実用化が控えている。今のところ、燃料電池コージェネは本体の燃料電池の信頼性などが問題であり、実用化にはやや時間がかかると見られているが、ダイムラー・クライスラーがカナダのバラード社の燃料電池を使用した自動車を数年後には実用化するとしている。となれば、移動体ではなく定置式の燃料電池コージェネは、より開発が楽であるため、意外と早い段階で実用化される可能性は否定できない。マイクロガスタービンの市場が立ち上がったとしても、市場の寿命が問題となってしまう。日本のガスタービンメーカーが、今ひとつマイクロガスタービン開発に積極的になれない理由はこうしたところにあると言えるだろう。
 三菱重工業、川崎重工業、石川島播磨重工業といった重工メーカーは、防衛庁向けポータブル発電機や、ターボチャージャーなどで、マイクロガスタービンに必要な技術は揃っている。しかし、最も前向きな姿勢を見せている三菱重工業でも、ターゲットは米国市場であるという。
 マイクロガスタービンの国内市場については全く見通しがたっていない。その状況は、規制緩和が近づいた今でも、そう大きく変わった訳ではない。