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ENAA新理事長に日揮・重久社長が就任
蓄積されたノウハウの一般産業への展開を検討



 エンジニアリング振興協会(ENAA)の新理事長に、日揮の重久吉弘社長が7月1日に就任した。1999年度のプラント輸出額が過去最低のレベルにまで落ち込んでいるような「厳しい状況」のなかでの理事長就任に「身の引き締まる思い」としながらも、「日本経済の再生には解決しなければならない問題が多いが、そこにENAAの力を有効活用できる面がある」と前向きな姿勢を見せた。

●エンジ産業の可能性に期待
 ENAAを構成する重工、建設、鉄鋼、電力、通信、産業機械、そしてエンジニアリング会社の各企業は極めて厳しい状況下に置かれている。「しかし、各社とも極めて優秀なエンジニアを抱えており、日本経済の発展に必ず寄与できる」。最も厳しい状況のなかでENAAの理事長に就任した重久氏は、記者会見の場で日本のエンジニアリング産業の持つ可能性を改めて指摘した。
 ENAAは今年3月「エンジニアリング産業の課題と提言」をまとめた。その中では、IT革命および標準化への対応が、エンジニアリング産業の大きな課題の一つとして位置付けられている。重久氏も「確かに欧米と比較して日本のエンジニアリング産業が遅れている面もある。しかし、キャッチアップできないほどではない」と、課題ではあるものの、さほど高い壁ではないことを指摘した。
 また、エンジニアリング産業の現状に関しても「確かに日本の業界は厳しいが、欧米のエンジニアリング産業も決して良いとはいえない」と、日本が一人負けしているとは認識していないようだ。
 日本の業界にとって、アジア地域の回復の遅れと、日本がそれまで得意としていた技術中心のプロジェクトが減ったことが大きいとしており、韓国や中国の進出も技術中心ではないプロジェクトが増えたことと関係があるとした。一方、ここにきて中近東が油価の高騰によってプロジェクトが動き出していることから「海外でチャンスがでてくるのでは」という。
 常々「21世紀はガスの時代」と述べる同氏は、今後、上流から下流まで天然ガス関連のプロジェクトが多く出てくると見ており、これらの分野で日本の産業が対応していける、との見解を示した。
 一方、アジアのプロジェクトでも欧米のメジャーが資本参加しているため、メジャーと距離的・文化的に近い欧米のエンジニアリング会社の受注機会が増え、日本が受注できなくなっていると指摘。日本のODAの積極的運用により、日本のエンジニアリング産業の受注機会を増やすべく、一部タイド化などを政府に働きかけていきたい、とした。

●ENAAは“シンクタンク”
 「これまでENAAは、各社の優秀な若手エンジニアの力を寄せ集め、高度な受託事業を手がけてきている。いわばENAAはシンクタンクであるといって良く、そこに蓄積された技術・ノウハウには重要なものがある。これを広く一般産業に展開する方向はないか、と考えている」。
 その一つとしてプロジェクト・マネジメント手法の普及・拡大をあげ、「日本プロジェクトマネジメント・フォーラム(JPMF)は活動をより活発化してもらいたい」と期待を述べた。ENAAとしても今後、日本的なPM知識体系の作成や、PM資格制度についても必要とあれば協力していく姿勢にある。
 「日本のエンジニアリング産業をかつてのように盛り上げて行きたい」と理事長としての意欲を見せた。


重久吉弘(しげひさ・よしひろ)氏の略歴
 昭和8年11月生まれ。東京都出身。
 昭和32年3月、慶応義塾大学文学部英文学科卒業。
 昭和36年1月、日本揮発油(現・日揮)入社。
 同59年6月、取締役。
 同61年6月、常務取締役。
 平成元年6月、専務取締役。
 同4年6月、代表取締役副社長。
 同8年6月、代表取締役社長(現任)。