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日立造船と三井造船は、ごみ焼却炉の技術開発・設計・製造で業務提携を締び、両社保有技術のクロスライセンスを実施、直ちに市場参入を可能にするための業務委託契約の締結にも基本合意した。これはごみ処理施設メーカーとしての「主導的立場の維持」(戸田亥三男・日立造船副社長)を狙いとしたもの。日立造船はストーカ式ごみ焼却炉とトランスファー型プラズマ式灰溶融設備、三井造船がキルン型ガス化溶融炉とスラグ有効利用システムを開示、相互に利用する。 ●顧客満足度向上にも寄与 我が国の自治体向けごみ焼却炉の市場規模は平成12年度が1万2,000トン程度と見られ、平成14年12月1日からのごみ処理施設関連の排ガス規制強化などに対応、地方自治体からの発注が大幅に増加している。これら地方自治体向けのごみ焼却炉は、これまで日立造船が得意とするストーカ炉が75%から80%を占めてきた。だが、ダイオキシン規制の強化などを背景に最近では、三井造船が先鞭をつけたガス化溶融炉などの新技術が注目され、競争も激化している。 ごみ焼却炉での日立造船、三井造船の業務提携は、その中で21世紀でもごみ処理施設建設メーカーとして確固とした地位を構築するのが狙い。つまり、それぞれ単独で対応するよりも両社の保有技術を相互に有効活用した方がより大きな成果が期待でき、顧客満足度の向上にも寄与できると判断した。日立造船は「ダイオキシン対策などでニーズが高まっているガス化溶融炉の品揃えが強化できる」(戸田氏)、三井造船も「日立造船の総合力が加わってキルン型ガス化溶融炉の普及が一段と促進されるほか、ストーカ式ごみ焼却炉のニーズにも対応できる」(喜多嶋浩副社長)など今回の業務提携のメリットを挙げている。 具体的には日立造船がガス化溶融炉で、@キルン型(三井造船)、A流動床式(独自開発)、Bストーカ式(フォンロール=スイス)の3方式での品揃えを完了。三井造船も従来型ごみ焼却炉で従来からの流動床式にストーカ式が加わり、両方式での営業が展開できるようになった。ただ、地方自治体などへの営業活動は「従来通り、それぞれ別個に行う」(戸田氏)方針であり、「最終的にはコストの勝負になる」(同)としている。 ●数10億円規模のメリット また、今回の提携によって新たな技術開発に伴う時間と費用の節約を図ることも可能になり、「両社で数10億円規模のメリットが出るのではないか」(根本久司・三井造船取締役)とし、将来の資機材の共同購入も視野に入れている。技術開発でも「今回の業務提携はスタートライン」(同)とし、今後「両社が協力して技術開発するほか、それぞれが独立した形で改良を加え、独自色を出していく可能性もある」(同)としている。さらに三井造船と日本舗道が現在、福岡県筑後市の「八女西部クリーンセンター」で実施している溶融スラグ資源化事業に日立造船が参加し、同事業を3社共同で推進することも検討されている。 日立造船、三井造船両社の平成12年度の環境事業(ごみ焼却炉を含む)の受注目標は日立造船1,200億円、三井造船600億円強。日立造船はストーカ式を中心にごみ焼却炉で国内158プラント、海外9プラントの納入実績を持ち、奈良県桜井市から流動床式ガス化溶融炉(75t/d×2基)の初受注も決めた。また、三井造船は八女西部クリーンセンターで実機稼働実績を持つキルン型ガス化溶融炉「三井リサイクリング21」を主力に営業攻勢を強めている。 |