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回復基調迎えた世界のエンジ・建設市場
―再編期にある世界のエンジニアリング産業―



 Chemical Week誌とEuropean Chemical News誌が相次いで、石油・化学を中心とする世界のエンジニアリング建設ビジネスについて全般ならびに企業別に特集している。そこに紹介された内容をもとに世界のエンジニアリング産業の現状・課題を紹介する。

●回復基調にあるエンジニアリング建設市場
 世界のエンジニアリング建設市場は徐々に回復している。アジア市場が回復し、北米市場は好況が継続して化学プラント建設分野の投資が続いており、とくに、スペシャルティ分野が好調であったことが要因である。欧州は低迷している。今後は北米・欧州・中東は成熟市場となり、イラン・イラク・中南米・カナダなどが期待できる。
 分野別には石油化学はポリマー分野、スペシャルティ分野が好調である。石油精製は脱硫・MTBE代替などの需要が動いている。改造や増強が多いがグラスルーツのFSも出てきているという。石油価格の上昇はアップストリーム投資につながったが、価格が安定すればダウンストリームの石油・石油化学の投資の復活に結びつく。大手石油企業・化学企業のM&Aは投資の再検討となり、投資の減少に結びつき、価格低下にもつながったが、検討段階がすみ、ようやく実行段階になった。ガス分野も有望分野で、GTLのようなガス関連技術も注目されている。
 ハイドロカーボン以外では、医薬やファインケミカルが欧米で大きく伸び、エンジニアリング各社はM&Aなどで陣容を強化している。電力分野は経済活況・規制撤廃から米国が大きく伸びたが、次は規制撤廃の成果が欧州で出ることが期待されている。ただし、この分野での失敗が、Raytheon E&C(REC)、Stone & Webster(SW)の2社が破綻する原因となることにあらわれるように競争の激しい、リスキイな分野となっている。
 変貌する市場に適合できるかどうかが企業生き残りに不可欠となっており、エンジニアリング企業は成長分野拡充のためにM&A、技術取得など多様な展開が見られる。

●事業再編と業界再編
 エンジニアリング企業にとって顧客が第一であり、顧客のニーズの変化への対応を重視している。顧客とのアライアンス―プラント建設だけでなく、メンテナンスにいたるアライアンスが欧米企業との間で増加している。これは同時にエンジニアリング企業のビジネスがEPCからサービス提供企業となることでもあり、多くの欧米エンジニアリング企業が推進している。顧客の業種も石油・化学から医薬、製紙などに広がっている。また、顧客のエンジニアリング企業へのニーズが高まるのに対して、エンジニアリング企業はプロポーザル費用高騰もあって選別入札するようになってきている。
 多くのエンジニアリング企業が事業再編(リストラクチャリング)を実施し、利益アップを図った。代表的なのはKvaernerとFluorである。Kvaernerは負債減少と赤字脱出を目指して、エンジニアリング建設などをコアビジネスとしてリストラを実施中である。一方、Fluorは株価水準の低迷に対する投資家の圧力によるもので、年初に終了を宣言した。EPCに並ぶサービスビジネス確立をしたものだが、投資家の一部に「不十分、遅い」との評価もある。
 Raytheonは英国ガス発電プラントの失敗からエンジニアリング部門をノンコアとしてMorrison Knudsen(MK)に売却した。RECはMKより売上高が大きい会社で、MKはRECの強力なエンジニアリング能力を獲得、新分野としてのハイドロカーボン分野に進出することになる。続いてSWが米国でガス発電プラントに失敗、Jacobs Engineeringに買収されることとなった。Jacobsはあらたに電力分野に進出する。本年はこれらに先立ち、英国Amecがカナダのコンサルティングエンジニア企業Agraを買収、エンジニアリング・サービス部門の拡充を図った。いずれも国際的大企業の成立である。
 エンジニアリング業界は10%のシェアをもつ企業のない業界であり、今後ともM&Aは続くと見られる。M&Aはこのような大型だけでなく、各社が新分野進出に際してとる手段であり、医薬などでも見られている。また、各社のコアビジネス選択に際して、事業の売買が進んでいる。
 地域市場動向・通貨動向と並んで株主志向がエンジニアリング企業の重要課題となっており、エンジニアリング会社のビジネスモデルに大きな影響を与えつつある。エンジニアリングビジネス、とくにEPCビジネスをコアビジネスとしては投資家から嫌われる傾向もでている。Fluorがその一例だが、ドイツのThyssen-KruppはUhdeなどのエンジニアリング事業をコアから外している。従業員持株のParsonsはハイドロカーボン分野からの撤退を考えているという。投資家から自由なのは、大手では私企業のBechtelだけであろうか。
 エンジニアリング企業間のアライアンスは近年進んだが、Uhde〜Parsons、Fluor〜SWのように十分な成果が得られなかったものもでている。低価格による競争という面では、かつての日本企業からいまや、脅威は韓国企業に移ったようだ。情報技術(IT)利用は調達におけるインターネット利用の普及、e−コマースが動き出している。