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相次ぐPFI関連団体セミナー
本格導入期迎え、活動が活発化



 環境分野でのPFI導入を推進している2つの団体、新エネルギー・リサイクル等PFI推進協議会、スマート・コミュニティ・コンソーシアムが、相次いで総会、セミナーを実施した。いずれも多数の参加者を集め、本格導入が始まったPFIへの関心の高さを示した。

●自治法の制約で融資契約が困難
 エンジニアリング振興協会などが主宰する「新エネルギー・リサイクル等PFI推進協議会」は「プロジェクトの現場から見たPFI」と題する講演会を行なった。東京都金町浄水場常用発電事業などを手がけている電源開発・君津地域広域廃棄物処理事業を手掛けている新日本製鐵がプロジェクトの経験をもとに、環境分野のPFIの課題などを展開した。
 電源開発新事業開発部・坂梨義彦副部長は、PFI事業とは「公共と民間との間のリスク分担の最適化・事前明確化」の有無にあるとし、PFI事業会社であるSPC(特定目的会社)は極力リスクを外部化し、その対価を負担する形になると指摘した。  金町の場合には長期継続契約で自治体による任意解除権が契約に記されることになるので、これに対しては債務負担行為を設定することで、リスクを回避。また電力と蒸気の引き取り保証が自治法上不可能であるが、燃料ガスの供給契約はTake or Payとなっており、この点をどうするかは未解決という。電力と蒸気にTake or Pay条項が付けられればこれも回避できることになる。さらに、金町の場合、行政財産の既設の建物の上に設備を設置しているため、PFI事業者、金融機関が私権を設定できない。これは金融上で大きな問題であり、未だに解決していない。そうしたこともあり、融資契約の締結が終わっていないという。
 一方、新日鉄環境・水道事業部プラント営業部の小河氏は、君津のプロジェクトについて、処理対象物が地域の一般廃棄物と条例によって市が処理することを定めている条例産業廃棄物に制限されており、他地域の産業廃棄物の処理が認められていない、等の制約があり、事業としてはローリターンとならざるを得なかった。2002年からの運営が予定されてるが、当初は富津市からの一般ゴミと3市からの焼却灰を溶融し、スラグ化する。第2期以降は、産業廃棄物を処理することでキャッシュフローを良くしていく考えだ。プロジェクトファイナンスに関しては「事業の透明性の観点からは競争入札が必要だが、技術が指定されている場合は馴染まないものもある」と日本版のプロジェクトファイナンスでは皆が認知できるようなものを作って欲しい、と述べた。
 いずれのプロジェクトでも、PFI事業における自治法の制約とファイナンス契約の難しさが強調された。

●IT化を睨んだPFI事業を検討
 日本総合研究所が主宰する「スマート・コミュニティ・コンソーシアム(SCC)2000」は、その設立総会で今年度の活動のターゲットである「オペレーション市場」に関して説明を行なった。
 PFIの導入が本格化されたことで、公共事業の枠組みの変化が始まっているが、PFIよりも遥かに影響の大きいIT(情報技術)革命のなかでPFIを捉え直す必要がある、と指摘。一方、廃棄物発電事業ではPFIを背景に運営事業の民間委託が拡大する可能性があり、発注時には運営効率が重視されることになる。その際の価格の中心はハードからオペレーションとなるため、ハードの価格低下を補う付加価値市場としてのオペレーション市場が期待されている。しかもITによりプラント運営から資材調達、リサイクル品の流通など様々な面での効率化が予想される。そのためSCC2000では、@オペレーション市場の透明化のための指標の策定、AIT化を展望したPFI事業モデルの検討、Bネット化時代のビジネスインフラ−の3点の検討を行なっていくとしている。
 PFI市場が本格的に立ち上ってきたことで、各方面の活動内容がより詳細・具体化してきた。それとともに、各企業の関心も高まっているようだ。