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99年度海外プラント成約アウトルック
本誌調査は1兆2,107億円、90年代で最低に



 本誌の独自調査による1999年度の海外プラント成約額は、1兆2,107億円で前年度比24.3%減となり、3年連続の減少となった。この1兆2,000億円台の水準は1990年代で最も低い数字で、海外受注が最も多かった96年度の半分にも満たない結果となった。機種別の成約額を見ると電力、環境関連設備の2部門が伸びたものの、他の部門は軒並み減少となっている。また、受注額100億円超の受注件数は30件で、98年度の39件から9件減少。受注件数全体も98年度の181件から99年度は134件と47件も減っている。これは世界的な案件数の減少や中進国の追い上げなどによる競争の激化など我が国プラント/エンジニアリング業界を取り巻く厳しい環境を反映したもので、中でも我が国業界の主力市場であるアジア地域でのプロジェクトの凍結・延期が大きく響いた結果と見られる。

●97年度以降、3年連続の減少
 99年度の海外プラント成約額は、本誌調査によると前年度比24.3%減の1兆2,107億2,000万円で、これまで90年代で最低だった92年度の1兆5,010億円を下回り、97年度以降、3年連続の減少となった。これは90年代で最も成約額が多かった96年度(2兆4,967億円)の半分にも達しない数字であり、87年(1兆430億円)をやや上回る厳しい数字となった。
 通産省機械情報産業局国際プラント推進室が6月初旬にまとめた「1999年度の海外プラント成約実績」によると、我が国企業の海外向けプラントの成約実績は573件、80.4億ドルで件数、成約額とも90年代に入って最低の水準となり、97年度以降、3年連続の減少となっている。
 国際プラント推進室では、年度ベースで90年代最低となった主な要因として、@アセアン地域の経済は全体的に回復の動きが見られるものの、同地域でのプラント・プロジェクトに依然、凍結や延期されたままの案件がある、A欧米や韓国などの企業との間でファイナンスの組成を含む価格面、非価格面での競争が激化し、我が国企業の競争力が低下している―などを挙げている。
 本誌調査結果でも国際プラント推進室の統計数字同様97年以降、3年連続の減少となり、90年代で過去最低水準となっているところから、これらの要因がそのまま当て嵌まりそうだ。
 99年度の海外プラント成約件数、成約額を機種別に見ると石油・ガス15件、1,710億円(前年度比34%減)、化学・肥料15件、1,266億円(65.8%減)、セメント3件、218億円(−)、鉄鋼・金属5件、364億円(26.2%減)、電力39件、5,411億1,000万円(121.9%増)、繊維2件、50億円(12.3%減)、自動車関連3件、113億円(78.7%減)、電気機器製造関連1件、12億円(61.3%減)、環境関連設備5件、404億円(64.6%増)、港湾荷役設備1件、37億円(94.7%増)、通信26件、1,397億円(45.2%減)、その他19件、1,125.1億円(66.4%減)。98年度で1件もカウントされなかったセメントで3件の成約があった。

●電力は前年度比121.9%の大幅増
 また、主力の石油・ガスと化学・肥料が90年代に入って初めて2,000億円の大台を揃って割り込んだのが99年度の大きな特徴のひとつと言えよう。特に化学・肥料は成約案件で目立つものが日揮〜ABB LUMMUS GLOBALのセラヤ・ケミカルズ・シンガポール向けの大型石化プラント(300億円)、三菱重工業〜Rekayasaのププク・カリマンタン・ティムール向けKALTIM4(肥料プラント、300億円)、三井造船のミツイ・フェノール・シンガポール向けフェノールプラント(200億円)程度。その結果、前年度比65.8%減の大幅な減少となり、プラント/エンジニアリング業界の業況低迷の要因ひとつとなっている。さらに石油・ガスの成約額が石油・肥料の成約額を上回ったのは95年度以来、4年ぶりで、それだけ化学・肥料の落ち込みが大きかったと言える。
 一方、前年度比121.9%増と大きく伸びたのが電力で、三菱重工業の米国サイスエナジー向け複合火力発電設備(600億円)やトルコTEAS向けエルビスタンB石炭火力(586億円)、東芝〜IHI〜東芝プラント建設のインドのBPLパワープロジェクト向け石炭火力発電設備(400億円)など比較的大型案件を成約している。ただ、電力の場合、98年度で成約額が2,438億円にとどまり、前年度比56.2%と大幅に落ち込んだことの反動もあると見られる。
 これら99年度の成約案件の中で受注金額が100億円を超えた案件数は石油・ガス4件、化学・肥料4件、セメント1件、鉄鋼・金属1件、電力11件、環境関連設備2件、通信3件、その他4件の30件。また、成約額500億円超の大型案件は、5件で、98年度が100億円超の成約案件39件、500億円超の成約案件8件だったので、それぞれ9件、3件の減少となった。

●99年度を底に2000年度は回復へ
 我が国プラント/エンジニアリング業界の主力市場であるアジア地域は、国によって差が出ているものの全体的には経済が急速な回復を見せ、これまで延期や凍結されていたプロジェクトが動き出し始めるなど明るい兆しも見え始めてきた。また、原油価格の高騰などを背景に中近東地域でも外貨収入が増大している産油国を中心に各種の案件が浮上し始め、中南米地域でもメキシコやブラジルなどが回復基調にあるなど主力市場が軒並み明るさを増している。そのため我が国のプラント/エンジニアリング業界は99年度を底に2000年度は回復に向かうとの見方が強まっており、最低でも98年度の水準(1兆6,000億円)はクリアできるとの見方も出ている。
 その中で期待される市場はやはりアジア地域で、注目されていた台湾新幹線プロジェクト日本連合が総額3,300億円で受注内定するなど好調なスタートを切った。また、天然ガス関連プロジェクトでも供給側と受入側のプロジェクトの双方が動き始め、LNGターミナルやパイプライン建設なども相次いで計画されている。天然ガス関連プロジェクトは中近東でも活発で、発電プロジェクトで従来の石油焚きの発電設備から天然ガス焚きにシフトする傾向が出始めている。中近東では、豊富な資金などを背景に化学・肥料分野でも、延期・凍結案件の具体化や新規プロジェクトの動きが出始めており、アジアに次ぐ有力市場になりそうだ。中南米地域ではブラジル、ベネズエラなどで天然ガス関連プロジェクトが胎動し始めており、同地域ではこの両国が中心となってプロジェクトが動いていきそうだ。